2028年から改正される遺族厚生年金 ─ 子どものいない配偶者はこう備える

2028年~遺族厚生年金が変わります

✅ 子どもがいないご夫婦、とくに発達障害のある方は要チェック!
2028年4月に予定されている遺族厚生年金の見直しで、最も影響を受けるのは「子のいない配偶者」です。ライフプランに大打撃を受ける恐れがあるため、早めの対策が不可欠です。
※子供が18歳以上の方は影響あります。


1. 改正前後のしくみをサクッと整理

◆ 現行制度(~2027年)

  • 女性:30歳以上で配偶者を亡くすと 終身給付/30歳未満は5年有期
  • 男性:55歳未満で配偶者を亡くすと そもそも支給なし

◆ 新制度(2028年~)

  • 男女共通:60歳未満で配偶者を亡くした場合 → 5年間の有期給付のみ
    ※終身支給が廃止され、男女差も原則撤廃されます[1]

つまり「30歳以上で終身」だった子なし妻は、5年で打ち切りに。一方、これまでゼロだった子なし夫には5年間の給付が新設されますが、生活保障としては不十分です[2]


2. とくに影響が大きいのはどんな家庭?

夫:一般雇用の正社員
妻:発達障害当事者で障害者雇用(またはパート)/子どもなし

  • 夫に万一があっても終身年金でカバーできる前提のライフプラン → 5年で途切れる
  • 妻の就労時間・年収を今すぐ大幅に増やすのは困難
  • 障害年金や各種手当の受給ハードルも高いケースが多い

3. ケーススタディ

ケースA:40代夫婦
●夫(45)年収550万円/正社員
●妻(42)ASD+ADHD・障害者雇用/年収120万円
2029年に夫が急逝 → 妻は月額9万円程度×5年=総額約540万円で打ち切り。
その後は妻自身の手取り120万円+貯蓄で生涯を乗り切る必要があり、生活再建が極めて厳しい。

ケースB:30代共働き
●夫(33)年収480万円/正社員
●妻(30)ADHD・短時間正社員/年収200万円
2030年に夫が病死 → 妻(35歳)の遺族厚生年金は5年間のみ。
妻自身が40歳を迎えるころには年金は途絶え、子どものいない老後資金をフルで自力準備する必要が生じる。

ケースC:逆転収入パターン
●妻(50)正社員・年収600万円
●夫(48)ADHD・パート勤務100万円
妻が先に逝去すると、夫は5年間だけ約月12万円の有期給付。
その後は自分の厚生年金もほぼないため、生活保護水準に落ち込むリスクが高い。


4. いますぐ取れる対策リスト

① 死亡保障の再設計

終身給付が消える分を生命保険で補完。
「現役世代の不足分」+「老後資金の不足額」を目安に保険金額を再試算しましょう。

② 年収アップ・転職による稼ぐ力強化

同じ就労時間で高い賃金を得られる職場探しは、ライフプラン改善の近道。
障害者雇用でも業種や企業によって時給格差は大きいので、情報収集と支援機関の活用を。
ただ、年収アップは非常に難しいことも実務を通して感じています。
二人が揃っているうちからスキルアップをしておいた方がいいかもしれません。

③ 障害年金の受給可否を再確認

精神障害・発達障害であっても等級次第では障害基礎年金+障害厚生年金(納付歴があり初診日の要件が該当すれば)が支給されます。
医師の診断書が鍵なので、専門家と連携を。

④ 長期資産形成(つみたてNISA・iDeCo)の継続

年金が減る時代こそ、少額でも“超長期の複利”を味方に。
相場変動による一時的な含み損で慌てないよう、リスク許容度を年1回セルフチェック


5. まとめ ─ 遺族厚生年金「5年」は影響が大きい

子どものいない配偶者にとって、2028年改正はたった5年しか守ってくれない制度への転換です。
特に発達障害と就労の制限が重なる場合、保険・収入・公的年金の3本柱を一体で組み直す必要があります。

「終身だから安心」という従来の前提は捨て、今から具体的な数字でシミュレーションを始めましょう。


参考文献

  1. 厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて」(第23回 社会保障審議会年金部会 資料)

※本記事は2025年6月時点の公表資料を基に執筆しています。最終的な法令・省令により詳細が変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省・日本年金機構の公式発表をご確認ください。