「自分だけじゃなかった」──ADHDとお金のリアルな数字

ADHDのリアルなデータ集

「気づいたら残高がゼロになっていた」「クレジット請求を開くのが怖い」「貯金しようと決めたのに翌月にはなくなっている」――。
こうした経験は決して珍しくありません。ADHD(注意欠如・多動症)の脳は計画・整理・衝動抑制のプロセスが定型発達と少し異なるため、家計管理でつまずきやすい傾向があると報告されています。
本稿では、海外調査(※)の統計を手がかりに、ADHD当事者が直面しやすいお金の課題を8つに整理。その要因を掘り下げつつ、実務家の視点で「今すぐ取り入れられる仕組み」を提案します。

※YouGov社による500名以上の当事者、2000名以上の定型発達者

1.ADHDの65%が「お金の管理が難しい」と感じている

ADHDではワーキングメモリや実行機能(タスク開始・順序立て・継続)が弱まりやすいため、家計簿入力や領収書整理など「地味で繰り返しの多い作業」を後回しにしがちです。
ここで大事なのは「性格ではなく神経生理の差異」だと理解すること。
一人で抱え込むより、作業フローそのものを自動化・外注するほうが合理的です。

  • 家計管理はクレカの残高確認に一本化
  • 毎月◯日に「残高→投資用口座」へ自動振替

2.財政不安を感じる確率が一般の2倍

統計上、ADHD当事者は「未来の見通しを言語化する」能力が弱まりやすく、同じ所得水準でも不安の主観評価スコアが高いことが知られています。
不安が強い=現実が悲惨、とは限りません。
むしろ「頭の中で将来像を組み立てにくい」ことが危機感を増幅させます。

対策はシンプルにしておくことです。

未来の出費を「数字」と「日付」で見える化(例:2026年1月に車検)しておく

3.衝動買い・予算管理・貯金に悩むのは当たり前

項目 ADHD (%) 非ADHD (%)
衝動買い経験 58 22
予算管理が苦手 51 19
貯金が難しい 49 24

ADHD脳は報酬系ドーパミンの瞬発力が高い一方、「後で得する」行動を維持するセロトニン系が働きにくい――とする理論があります。よって、「今ここ」の快楽が優先されやすい。

「意志の力」で抑え続けるのは非現実的。例えば

  • 自分で管理しないで誰かに管理してもらう
  • 貯蓄用のカードははさみを入れて使えないようにするといった感じで物理的なガードが大切です。

4.借金を抱える確率は一般の3倍

調査では31%のADHD当事者が「返済計画に苦慮する債務」を抱えた経験があり、非ADHD(11%)の約3倍。
背景には家計管理の苦手と、衝動性による浪費、体調不良やストレスによる浪費などが原因としてあります。

借金をしてしまったら、返済のためにできることを順序立てていくことが重要です。

まずは借金の額をきちんと確認して、返済計画を立てることからスタートです。

その中で、必要があれば借り換えや条件変更も検討します。

5.請求書の払い忘れは3倍の確率

「請求書を見つけ→覚えて→期限までに→支払う」という4段階は、ADHDにとって全てがハードルです。
忘却を個人責任にせず、プロセス自体を潰すほうが建設的。

  • 家賃・光熱費は即口座振替 or クレジット集約
  • どうしても紙が残る場合は「受取=開封=決済」をワンアクションで完結させる。その場で支払うルール
  • 一人で難しい時は誰かに一緒にやってもらうなどの強制力を働かせる工夫が必要です。

6.当事者の50%が予算未達

ADHD当事者の50%が「予算未達」を自覚しています。
時間感覚が伸縮しやすく、半年後の出費を今日の自分がリアルに想像しにくいためです。

そこで、破綻前提で予算を組みます。

目標予算とデッドライン予算を決めます。
できればこの範囲の予算、どうしても超えたら絶対ダメな予算、を設定しましょう。

7.衝動買いリスクは4倍

「店を歩いていたら気づけば買い物袋を持って歩いていた」
この衝動は視覚刺激+即時報酬に脳が反射した結果です。
発生をゼロにするのではなく、時間を足すだけでも効果が出ます。

  • 欲しいと思っても必ず1日おくことを徹底する、これだけでも効果はあります。自分のやり方に合わせて工夫をしていきましょう。

8.銀行に頼りすぎているかも?

「銀行が全部教えてくれるだろう」と考える人が19%いましたが、実際の銀行窓口は(当たり前ですが)多数派用に設計されています。

そして、銀行はお金を貸すことと預金がメインの業務です。
銀行に何でも期待するのは辞めて、保険会社や証券会社もバランスよく使っていきましょう。

一人でどの金融機関をどう使うか判断が難しい人は、ファイナンシャルプランナーに依頼するのも手です。

おわりに:データは「責める材料」ではなく「設計図」

数字を並べるとシビアに見えるかもしれません。
ただし統計は「ダメさの証明」ではなく、適切なツールと仕組みを選ぶ判断材料になります。
ADHDの脳特性は変えられませんが、環境とプロセスはデザインできます。

1つずつ仕組み化することで、数字ストレスの少ない家計へシフトしていきましょう。

一緒に数字を見える化したい方は公式ラインからお問い合わせください。